裁判はじまる

東京地裁(611号法廷)
2025年12月16日(火)10時開廷

アテネ・フランセの講師たちが、不当解雇の撤回や未払い賃金・有給休暇の補償などを求めて、東京地方裁判所に提訴しました。第1回口頭弁論は 12月16日(火)10時 から開かれます。この裁判はどなたでも傍聴できます(録音・撮影は禁止)
原告本人による陳述も予定されています。ぜひ、傍聴にお越しください!

アクセス:東京地方裁判所

東京地下鉄メトロ日比谷線「霞が関」駅から徒歩3分
(危険物や刃物などの持ち込みはできません。) 

労働基準監督署の是正勧告と、学校による嫌がらせ

 アテネ・フランセに勤務するフランス人講師Aさんは、2021年秋、子どもの運動会に参加するため、はじめて有給休暇を取得しました。しかし学校の指示に従い補講を行ったにもかかわらず、学校は有給休暇の代わりに、補講の賃金を支払いませんでした。困ったAさんが労働基準監督署に相談すると、2022年4月、労働基準監督署は学校に未払い賃金を支払うよう行政指導(是正勧告)を行いました。

 ところが、学校は行政指導に応じず、それどころか経営陣はAさんに対する嫌がらせを始めました。ついにはAさんの子どもの通う保育園に、必要もなく電話をかけるなどの行為にも及びました。家族にまで影響が及んだことに、Aさんはショックを受けました。また、経営陣からは、アテネ・フランセ以外のAさんの勤務先も教えるように求められました。Aさんは不安になり、出勤するのが怖くなるほど、精神的に追い詰められていきました。

担当講座のカット、契約打ち切り

 Aさんは同僚たちとアテネ・フランセ労働組合をつくり、組合が学校と団体交渉を行いました。8ヶ月経った2022年12月、学校はようやく嫌がらせを謝罪しました。Aさんは、学校との関係が少しは良くなることを期待しました。

 しかし、次の学期、学校はAさんに担当講座の1つを学期内に終わるよう指示しました。そして講座が終了しても、Aさんに代わりに講座を与えませんでした。Aさんは長らく契約書の所定労働時間どおりに働いてきましたが、突然その約束が守られなくなり、Aさんは収入も減りました。Aさんは、講座を受講していた生徒にも申し訳ない気持ちでいっぱいでした。

 それからまもなく、無期雇用のAさんは、所定労働時間の記載のない有期契約への不利益変更を求められました。Aさんが変更を拒否すると、2023年8月、学校はAさんの契約を一方的に打ち切りました。こうしてAさんの約10年間のアテネ・フランセでの勤務は終わりました。


*なお、学校の主張によれば、契約書の時間は「時間割に載せる時間」であって「所定労働時間」でないそうです。しかし契約書には、Aさんが「週◯◯時間」の「勤務を確実に行う」と書かれており、どこにも「時間割に載せる時間」とは書かれていません。

乳幼児の看病や入院でも、有給休暇が認められない

アテネ・フランセに勤務するフランス人講師Bさんは、乳幼児を抱えながら働いていました。授業の準備時間や担当授業の間の待機時間が労働時間と見なされない語学学校の講師は、実際には長時間働いているのに、書類上の労働時間が足りず、社会保険の加入できないケースがよくあります。Bさんも社会保険に加入できず、産休手当や育休手当がありませんでした。そのため、Bさんは出産後、すぐに仕事に戻らざるをえませんでした。

けれどもBさんの子どもは病気がちで、Bさんはたびたび看病や入院のために仕事を休む必要がありました。Bさんの賃金は時給制なので、休むと収入が減ります。そこで、Bさんは有給休暇を取りたかったのですが、学校の経営陣から嫌がらせを受けるAさんの姿を見て、しばらく怖くて「有給休暇」が欲しいと、言えずにいました。

しかし限界を感じたBさんは、夫と一緒に学校を訪れて、状況を説明して有給休暇をお願いしました。それでも、学校はBさんに有給休暇を認めませんでした。

行政が指導しても、約2年間、有給休暇をもらえず、契約打ち切り

 困ったBさんが労働基準監督署に相談すると、2022年10月、労働基準監督署は再び行政指導(是正勧告)を行いました。しかし学校は行政指導に応じず、今後も有給休暇を与えないと通知しました。その後、Bさんは契約を打ち切られるまでの約2年間、一度も有給休暇を得られず、子どもの病気や入院の際には無給で休むしかありませんでした。

最終的に、Bさんも、Aさんと同じく無期雇用であるのに、所定労働時間の記載のない有期契約への不利益変更を求められました。不利益変更を受け入れなければ、契約を打ち切ると通告され、Bさんは次第に精神不安定となりました。しかしBさんが、あらためて有給休暇を求めると、学校は「有給が欲しければ契約変更に応じるように」と言いました。2024年8月、Bさんは最後の授業を行えず、無給で休んで通院したところ、「適応障害」と診断されました。そして2歳の幼児を抱えたまま仕事を失いました。


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国から助成金を受給しながら、2度の行政指導には応じない

アテネ・フランセは2度の行政指導(是正勧告)に応じず、「講師は雇用契約ではなく業務委託である」と主張します。つまり、講師は労働者でなく、個人事業主(フリーランス)だというわけです。しかし、その2年前には、学校は「講師は雇用契約である」と申請して、国から雇用調整助成金を受給しています。雇用調整助成金は、「雇用」でなければ受給できない制度です。

 国から助成金を受けるときには「雇用」と言い、行政指導を受けるときには「業務委託」と言って指導に応じない。こんな「ウルトラC」は認められるのでしょうか。しかし学校が受給した助成金の原資は私たちの税金であり、学校法人としての税制優遇を支えるのも私たちの税金です。

*なお、学校は雇用調整助成金は間違えて受給してしまったと主張しています。行政の助成金の受給には様々な書類の提出や審査があると思いますが、「間違えて」もらえるものなのでしょうか?

学校も講師も行政も「雇用契約」と認識していたのに。。。

AさんとBさんは「業務委託」の個人事業主(フリーランス)なのでしょうか?それとも、「雇用契約」の労働者なのでしょうか?AさんとBさんの契約書には「雇用」の文言や「賃金」「退職」規定など、「業務委託」ではありえない文言・規定があります。

また、労働基準監督署から行政指導(是正勧告)を受けるまで、アテネ・フランセは、AさんとBさんが「雇用」である「パート(タイム)」であると、行政に繰り返し申告してきました。ビザ更新の申請書(法務省)、子どもの保育園の就業証明書(地方自治体)、国からの給付金の申請書(厚生労働省)と、証拠はいくつもあります。そして、前述のように、AさんとBさんを「雇用」と申告して、学校自身も国から助成金を受給までしていました。

また学校は講師の賃金台帳を作成して「賃金」を支払い、源泉徴収を行い、年末調整までしていました。少し税務や労務に詳しい人ならご存じだと思いますが、これらは学校が講師を「雇用契約」の労働者として扱っていることを意味します。なぜなら、業務委託の場合、学校が支払うのは「賃金」や「給与」でなく、「報酬」となるので、とくに賃金台帳や年末調整はありえません。

行政指導を受けると「業務委託」になっちゃうの?

つまり、AさんとBさんは「雇用契約」の労働者であると、学校自身が認めて、行政にも申告してきたのです。そして行政つまり労働基準監督署もAさんとBさんが「雇用契約」の「労働者」であると認めて、学校に対して行政指導(是正勧告)を行ったのです。ところが、行政指導があると、学校は「講師は雇用契約の労働者ではなく、業務委託」だから指導に従わない有給休暇も与えないと言うのです。

「業務委託」だから、無期雇用も認めない!?

さらに、AさんとBさんが、労働契約法の基づき、契約期間の「無期転換」権を行使すると、アテネ・フランセは、それも認めないと言い出しました。労働契約法によれば、「契約社員」や「パートタイム」などの有期契約の人でも、契約の更新を繰り返して5年以上経つと、契約期間を無期に転換することができます。つまり、正社員の人のように定年まで働くことができるのです。そして、労働者がこの「無期転換」権を行使すると、会社はそれを拒否できません。(よく勘違いする人がいますが、契約期間が無期となるだけで、給与などの待遇面が正社員と同じになるわけではありませんので、ご注意ください。)

ところが、アテネ・フランセはAさんとBさんの契約の「無期転換権」も認めないと言い出しました。ここでも学校は「業務委託」と主張します。つまり、AさんとBさんは「雇用契約」の労働者でなく、「業務委託」の個人事業主(フリーランス)だから、そもそも労働契約法は適用されない、というのです。

契約の不利益変更を受け入れなければ、契約打ち切り

 こうしてアテネ・フランセは、法律で認められたAさんとBさんの「無期雇用」を認めませでした。さらに、所定労働時間の記載がない1年未満の「有期雇用契約」への不利益変更を提案し、応じなければ一方的に契約を終了すると通告しました。Aさんは2023年夏に、Bさんは2024年夏に一方的に契約を打ち切られ、解雇となりました。

「雇用」と「業務委託」を使い分けるアテネ・フランセ

アテネ・フランセは「有給休暇」や「無期雇用」という労働者の権利が問題となると、講師は雇用契約の労働者ではない、「業務委託」の個人事業主(フリーランス)」だと主張して、これを否定します。最終的にはAさんもBさんも解雇してしまいました。ところが、同じ時期に、「就業規則」の変更や「労使協定」を行うために、学校は労働者の過半数代表を選出する選挙を実施し、選出された労働者代表に就業規則の意見書を求めたり、労使協定を締結しているのです。

会社勤めの人はよくご存じだと思いますが、「就業規則」は労働者に対する規則であり、「労使協定」とは労働者と会社の協定です。つまり、講師たちが「業務委託」の個人事業主(フリーランス)なら、絶対にあり得ないことを学校は進んでやっていたのです。

労働者代表も「業務委託」だから、契約打ち切り!?

労働者の過半代表の選出選挙には、AさんとBさんも参加しましたし、選出された労働者代表のCさんは、AさんとBさんと同じ形態の契約書で、同じように働いていた講師でした。

しかし2023年10月、学校はCさんから「就業規則」の意見書を受け取り、また「労使協定」を結ぶと、態度を一変させ、やはりCさんも「業務委託」の個人事業主(フリーランス)だと主張しはじめ、2024年3月には、無期雇用のはずのCさんも解雇してしまいました。

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苦しんでいるのは自分たちだけじゃない! 

この4年間、私たちは組合の結成、団体交渉、記者会見、ストライキ、署名活動と、みなさんの協力を受けながら、アテネ・フランセに対して、できることはすべてやり尽くしました。行政も2度にわたって、アテネ・フランセに行政指導を行ってきました。

それにもかかわらず、アテネ・フランセは「業務委託」と主張し続け、講師たちの有給休暇や無期雇用という権利を否定してきました。この期に及んでは、もはや司法に正義を求めるほかありません。

外国人が日本で裁判を起こすことは困難です。ビザや言語の制約から、働ける仕事は限られています。さらに語学学校の講師のような非正規職では、裁判で勝訴しても金銭補償は十分と言えず、日本語での裁判準備は手間も時間もかかります。頼れる家族が近くにいない人も多く、仕事を失えば、ビザの更新ができないこともあります。長期にわたる裁判は、経済的にも重い負担となります。

多くの同僚たちが、AさんとBさんと同じような思いをし、同じように契約を打ち切られました。そのなかには、同じように乳幼児を抱える同僚もいました。裁判に加わることができなかった同僚たちの思いも背負って、AさんとBさんは、今回の裁判に臨んでいます。

たしかに非正規職の外国人の裁判ほど、費用対効果の悪いものはありません。しかしAさんもBさんも、そして他のフランス人講師たちも、アテネ・フランセで「フランス語」だけを教えてきたわけではありません。言語とは、文化を伝えるための手段です。

フランス文化には、もちろん戦争や植民地主義の歴史など反省すべき側面もあります。それでもフランス人講師たちがフランス文化に誇りを持っているのは、それが、「人間は正義を求めて連帯し戦うことができる」という事実を伝えてきたからです。

たとえ道が険しくとも、私たちは、復帰を目指して最後まで諦めません。


2025年12月15日 アテネ・フランセ労働組合